古典とは何か――『はじめて学ぶ政治学:古典・名著への誘い』
岡崎晴輝・木村俊道(編)『はじめて学ぶ政治学:古典・名著への誘い』(ミネルヴァ書房)が刊行されました。政治思想の古典文献を初学者向けに解説した書物です。私が、「政治Ⅱ:アーレント『人間の条件』」の部分を執筆担当してます(Amazonでイメージが表示されてないようですが、装丁も素晴らしい)。
古典文献のエッセンスを専門家が初学者向けに解説するというのは、ありそうでなかったような気がします。ホッブズ、ロック、ルソーといった古典中の古典から、シュミット、アーレントなどの20世紀の思想、そしてフェミニズムや多文化主義、エコロジーなどの現代に至るまで幅広い内容を、30代前後の若手の研究者が担当するという構成になっています。
目次だけ記述すると、
Ⅰ 政治学の基礎概念
1 政治Ⅰ シュミット『政治的なものの概念』
2 政治Ⅱ アーレント『人間の条件』
3 国家と社会 ホッブズ『リヴァイサン』/ロック『統治論』
4 権力 フーコー『監獄の誕生』
5 公共性 ハーバーマス『公共性の構造転換』
Ⅱ 自由民主主義の理念
1 自由 バーリン『自由論』
2 デモクラシーⅠ ルソー『社会契約論』
3 デモクラシーⅡ シュンペーター『資本主義・社会主義・民主主義』
4 平等 ロールズ『正義論』/ドゥーキン『平等とは何か』
5 ナショナリズム ミラー『ナショナリティについて』
Ⅲ 自由民主主義の制度・政策
1 立憲主義 ハミルトン、ジェイ、マディソン『ザ・フェデラリスト』
2 代議制 ジョン・ステュアート・ミル
3 政党 デュペルジュエ『政党社会学』
4 官僚制 ウェーバー『支配の社会学』
5 政策形成 リンドブロム、ウッドハウス『政策形成の過程』
Ⅳ 現代政治の諸問題
1 近代・啓蒙・理性 ホルクハイマー、アドルノ『啓蒙の弁証法』
2 フェミニズム ペイトマン『女性の騒乱』
3 多文化主義 レイプハルト『多元社会のデモクラシー』、キムリッカ『多文化時代の市民権』
4 エコロジー ドブソン『緑の思想』
5 戦争と平和 ウォルツァー『正戦と非正戦』
6 市民教育 『クリックレポート』
Ⅴ 政治の省察
1 国制 アリストテレス『政治学』/モンテスキュー『法の精神』
2 宗教 アウグスティスス『神の国』
3 統治 マキャヴェリ『君主論』
4 人間 モンテーニュ『エセー』
5 歴史 ヒューム『道徳政治文芸論集』/バーク『フランス革命の省察』
6 文明 福沢諭吉『文明論之概略』
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ボリュームがあり、コストパフォーマンスもよいと思います。まだ全部に目を通してはいないのですが、「はじめに」でも触れられているように、入門書であると同時に最新の研究成果が盛り込まれた良書のようです。正直、私自身これらの本を全部読んでいないので、活用させて頂く予定です(笑)。
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