2014/02/17

映画「ハンナ・アーレント」(マルガレーテ・フォン・トロッタ監督)を鑑賞して(その2)

・「人間関係なんてどうでもいい、重要なのはこの映画のメッセージだ。悪の陳腐さこそ普遍的問題だ」という評価もあるかもしれない。確かに、分かりにくいアーレントの思想を「思考の人アーレント」対「無思考の人アイヒマン」という構図に落とし込むことは映画化する際に必要な作業であったかもしれないし、またその「悪の陳腐さ」が同時代アメリカでは理解されなかった悲劇(ソクラテスから続く哲学者の悲劇)とその中でも育まれた夫婦愛は「感動のドラマ」であったのかもしれない。そして映画の内容以前に、アーレント自体に関心が向けられるのは喜ばしいことなのかもしれない。しかしながら、それでも危惧すべきなのは、この映画で取り上げられたアーレントの「悪の陳腐さ」the banality of evil が、メディアで消費され使い古され「陳腐化」していくことである。
 

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映画「ハンナ・アーレント」(マルガレーテ・フォン・トロッタ監督)を鑑賞して(その1)

・諸事情により長らく更新が滞っていましたが、不定期的に更新したいと思います。
 
 
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・何人か同僚の先生方から映画「ハンナ・アーレント」についてコメントを求められた。見ていない映画についてはコメントできないし、あまり見たいとも思わなかったので、「残念ですけど、仙台では上映されないんですよね」と言ってお茶を濁してきた。しかし先日、仙台でわりと近くの映画館で上映されることを知ってしまったので、半ば義務感で観に行くことにした。以下、独断と偏見によるコメントになります(ネタバレあり)。
 

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2011/10/20

宮城教育大学に勤めることになりました

 10月1日から国立大学法人・宮城教育大学に勤めることになりました。

 これまでお世話になった諸先生方、学兄の皆様、誠に有り難うございました。今後もご指導のほどをよろしくお願い致します。これまでの研究を踏まえ、政治学を自分の中で問い直していきたいと考えております。

 宮城教育大学の諸先生方、学生の皆さん、スタッフの皆様、どうかよろしくお願い致します。震災の後で実家に近いこの職場に移ることができたのも何か天啓のようなものを感じております。教育と研究活動を通じて宮城をはじめとする東北の復興に少しでも貢献できればと考えております。

2011/07/29

明治大学130周年記念懸賞論文に入選しました。

「リアリティとしての《公共性》とその外部:ハンナ・アーレント《公共性》再考」が、明治大学130周年記念懸賞論文に優秀賞として入選しました。審査頂いた関係者の方々に御礼申し上げます。拙論を高く評価して頂き、今後の研究の励みになりました。また大学で(アーレントを知らない)学生さんに講義することは、「なぜアーレントが重要なのか」を考え直すきっかけとなったと思います。

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2011/05/16

『政治思想研究』に拙稿が掲載されました

「政治における「自立」の問題――アリストテレスにおける「アウタルケイア」を中心に」政治思想学会『政治思想研究:福祉社会と政治思想』(第11号、2011年5月、風行社)に掲載されました。「私的な自立」と「公的な自立」は政治においてどう関係しているのかをアリストテレスを題材として論じたものです。不勉強でお恥ずかしい限りですが、以下のようなことに関心がある方はお時間がありましたらご覧下さい。

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2011/04/17

「震災以前/以後」「私たち/彼ら」の距離――「マイケル・サンデル 窮極の選択「大震災特別講義~私たちはどう生きるべきか~」」(4/16放映)を視聴して

「白熱教室のサンデル先生は、この日本の大震災をどう考えるのか?」 一応時間前にTV前に待機して(正座はしてないけど)視聴したが、お世辞にも良い内容とは言えず、最後は軽い失望感が残った。いろいろ理由はあるが、一つはまだ現代進行形で原発を含めて見通しの経たない問題にステレオタイプな議論を持ち込むことの空疎さ、そしてもう一つはサンデルが劣化したのではなく(良くも悪くもサンデルは変わっていない)受け取るこちら側が根本的に変わってしまった点に関係している、と個人的に感じた。

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2011/04/11

「政治学」に何ができるか(1)――国家と個人の自足性(アウタルケイア)という問題

・人は一人では生きていけない。人が生活するのに必要な物資・サービスが確保され、それが一時的な利害関係ではなく恒常的な信頼関係に支えられた状態。アリストテレスはそれを「自足性(アウタルケイア)」と呼び、ポリス(国家=社会)がその実現単位であるとした。人は生活のために家庭(オイコス)を形成し、それが集まり村となり、さらに集合してポリスとなる。このように人が物質的・精神的な充足を得るためにコミュニティ(群れ)を必要とし、それが(単なる人為的な約束事ではなく)自然本性に根ざしていることは、有名な「ポリス的動物」という言葉で表現されている。


政治学 (西洋古典叢書)政治学 (西洋古典叢書)
アリストテレス 牛田 徳子

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2011/04/03

「政治学」に何ができるか(0)

・未曾有の大災害に際して「政治学」に何ができるか。

国家のはじまりの一つが洪水を防ぐ公共事業にあったことを思い起こすならば、地震や津波という自然災害への対処は古くて新しい「政治」の課題である。そして「学」としての「政治-学」に意義があるならば、それは「政治」に従事する当事者には「見えない」ものを見えるようにすることにある、と私は思う。どこに問題があるのか、その問題をどのようなプロセスで解決できるのか、またその人材をどう選び集めるのかは必ずしも自明ではない。政治過程論、比較政治学、国際政治学、地方自治、政治史、そして政治哲学、いろんなアプローチも「見えない」政治問題を「見える」ようにすることで一致していると思う。

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2011/01/24

「サンデル白熱教室」再考(1)――政治における「美徳」とは何か

・政治思想に流行語大賞があるならば、去年は間違いなく「白熱教室」だったと思う。
「白熱教室」という言葉自体アナクロでいかにもNHK風(失礼)なのだが、この誰も使わない一般名詞がサンデルの政治哲学と結びつき固有名詞として流通するようになった。政治哲学という固いテーマに学生はともかく、一般のサラリーマンやOLは関心がないという(私も含めた)思いこみは、サンデルとNHKによって見事に覆された。このことは喜ぶべきことであり、政治哲学が狭いサークルで重箱の隅をつつく話ではなく、広くアクセスされるものになって欲しいと思うのは私だけではないだろう。

ハーバード白熱教室講義録+東大特別授業(上)ハーバード白熱教室講義録+東大特別授業(上)
マイケル サンデル Michael J. Sandel NHK「ハーバード白熱教室」制作チーム

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2010/07/02

政治家に必要な教養とは何か――参院選東京選挙区候補者の「お薦めの本」

・読売新聞7/2の紙面で、参院選東京選挙区の候補者「一番のお薦めの本」がリストアップされていたので引用・コメントしてみました。順番は紙面の掲載順。個人的に候補者の読書に興味あったので政策主張は割愛しています。 

・江木佐織(国民新党)、松田公太(みんなの党)、東海由紀子(自民党)、山田宏(日本創新党)、小倉麻子(たちあがれ日本)、矢内筆勝(幸福実現党)、小池晃(共産党)、海治広太郎(新党改革)、森原秀樹(社民党)、竹谷とし子(公明党)、中川雅治(自民党)、小川敏夫(民主党)、蓮舫(民主党)

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